人生を彩る家族との思い出に涙が止まらない『リメンバー・ミー』

映画『リメンバー・ミー』を見てきました。街中で主題歌を耳にして、「ああ、これは見に行かないと!」と直感的に思い、夫に息子を預けて1人で行きました。(働くママには、贅沢な1人時間!)
で、結論、とってもよかったです。金曜の夜、いい大人が六本木で、1人でアニメ映画見ながら号泣…。一体何がそんなに私の涙腺を刺激したんでしょうか。

映画の中にある、希望の光 

まだうまく言語化できてないのですが、まず最初に1つだけ確かに言えるのは、私が新卒で映画会社に入ったのは、こういう感動をたくさんの人に届けたいと思ったからだった、と思い出したことでした。
映画は、暗闇で迷っていた学生時代の私の、心の逃げ場所でもありました。その暗い逃げ場所の中に小さな希望を見つけては救われていました。
 
余談ですが、私には、心の内側の世界と、現実的な外側の世界が、同じ量で裏と表のように存在しているような気がしていて、表ばかりに出ずっぱりになると、途端に引きこもりたくなる衝動があります。で、引きこもりたくなると、本や漫画を山ほど買ったり、映画やビデオをボケーっと見たり、何か書き物を始めたり、ネットサーフィンをしたり。
 
そんなあちら側の世界で息をして、その中で見出す希望の光は、こちら側の現実世界で生きるための糧となっていたのです。そうやって「こういう映画を世に届けたい」と映画会社に入社しました。
22歳の幼い思いでしたが、何回転職をしていても、ベーシックな欲求は変わらないんだろうと思います。日々を生き抜いていくための希望の光を提示したいと。

死者が1日生者の世界へ戻って来るために必要なもの 

それでは、『リメンバー・ミー』にあった希望の光とは何か。
それは、タイトルの「リメンバー」にある通り、“記憶がつなぐ愛の絆”です。
 
リメンバー・ミー』はある悲しい出来事から音楽禁止を決めた靴職人の一家の物語です。メキシコに住む主人公ミゲルは、その家族の中で密かに音楽を愛する少年。彼は日本で言うお盆のような日に、ひょんなことから死者の世界に迷い込みます。それは亡くなったご先祖様が、こちらの世界に帰ってくる日でもあります。死者の世界と生者の世界との間に、橋が架かる日なのです。
日の出までに、ミゲルは元の世界に戻れるのか。大好きな音楽を続けることができるのか。絶妙なテンポとストーリー展開で物語は進みます。
 
面白いなと思ったのは、まずその設定です。メキシコのお盆の日に家族はご先祖様の写真を飾るのですが、死者たちは自分の写真が飾られることで、その橋を渡ってこちらの世界に来る権利が得られます。(死者は入国審査のようなところで顔写真を撮られ、それが実際にこちらの世界に飾られているかが照合され、あれば橋を渡ってくることができるのです。)肉体がこの世を去っても、人は、思い出の中に生き続ける。思い出は、この物語の世界では「写真」というかたちで表現されているのです。

記憶の中に生きる愛の思い出

生きるということは、肉体として生きるということと、人の記憶の中に生きるという2つがあるのだということが、『リメンバー・ミー』の世界観に骨格のように組み込まれていました。
そして、人の記憶に残るかどうかは、どれほどの愛を交わしたのかということ。親子の愛、夫婦の愛、音楽への愛。
それが映画のタイトルでもある、主題歌『リメンバー・ミー』の歌が映画の中に1本の川のように何度も流れてきます。

 

リメンバー・ミー
お別れだけど
リメンバー・ミー
忘れないで
たとえ離れても心ひとつ
おまえを思い 歌うこの歌
リメンバー・ミー
遠く聞こえる
リメンバー・ミー 
ギターの音色は
優しく見守り包み込む
また抱きしめるまで
リメンバー・ミー

▼『リメンバー・ミー』劇中主題歌動画

※注:下記の動画はネタバレが含まれるので、映画視聴後にご覧ください

JAPANESE - Remember me (Lullaby) w/S&T【リメンバー・ミー(藤木直人&中村優月)】 - YouTube

JAPANESE - Remember me (Reunion) w/S&T【リメンバー・ミー(石橋陽彩&大方斐紗子)】 - YouTube

▼サントラはこちら

 

主題を彩る鮮やかな世界観と目が離せないストーリー展開

ここまで話してきた主題が涙を誘うのはもちろんですが、一方でそのテーマを彩る世界観とストーリー展開も素晴らしい。

この映画のリー・アンクリッチ監督は、ピクサーの『モンスターズ・インク』や『トイ・ストーリー』シリーズ、『ファインディング・ニモ』などに編集技師〜監督として関わる、ザ・ピクサーマンという感じの経歴の持ち主。これまでのピクサーの流れを汲みつつも、子ども向けには表現が難しい「死者」の世界をうまく描いています。

私、『モンスターズ・インク』の扉がバーっと出てくるオープニング映像とか好きなんですが、本作のオープニングの切り絵でストーリーを見せる感じもとっても素敵。

ご先祖様を迎える死者の日も明るく色鮮やかで、また死者の世界も奥深く広く美しい。ガイコツがこんなにかわいいなんて!さらには死者の世界での歌もまた素敵。

さらには、予想をひっくり返されるストーリー展開も目が離せず、飽きさせずに一気に見せます。

▼楽しい雰囲気が垣間見える、海外の主題歌PV的な映像

(これは視聴前でも楽しめます!)

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▼主題歌以外で最も盛り上がるデュオ『ウン・ポコ・ロコ』

映画の楽しい雰囲気が伝わってきます!

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大切なことを改めて教えてくれる

人生で大切なことは、人によっていろいろあります。お金、趣味、仕事…でも最も普遍的で、人生の根本にあるものの1つは、家族との思い出なのかもしれません。

私自身の家族との思い出の1つには、父のシンガポール駐在時代の南国での暮らしが色鮮やかに残っています。咲き乱れる蘭の花、飼っていた熱帯魚、日に焼けた現地の人たちと、桟橋でワタリガニを大量に釣ってチリクラブにしたこと。住んでいたマンションのプールサイドで食べたフライドポテトがうまかったこと。小学校に通ったバス。海外暮らしのときは、比較的家族で過ごす時間が長かったのでしょう。

一方自分の夫と子どもとの思い出。息子が生まれた日、朝の3時から陣痛が始まったこと。夜泣きがひどくて、抱っこ紐に息子を入れて早朝近所を歩き回ったこと。息子が迷子になって交番に駆け込んだこと。夫と飲んだビール。ゴツゴツした岩を降りていった美しいハワイのビーチ。

目を閉じると、まぶたの裏には、家族との思い出のワンシーンワンシーンが、鮮やかに蘇ります。

普段は機会がなければ、思いを寄せることもないでしょう。それでも、人の温かさや自信や生きる力は、そういう家族との思い出に根ざしているものなのです。

あなたの脳裏に浮かぶ思い出のワンシーンは何ですか?お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんとの思い出は?

家族とは、その連綿と続く系譜の中に、思い出を秘めて息づいているのです。そしてそれは、子へ孫へと繋がっていく。それが大切な生きている意味の1つなのです。親からもらったもの。子へと贈るもの。それは愛です。

 

リメンバー・ミー』はそんな繋がりの奇跡、喜びへの賛歌のような映画でした。

5歳の息子にはちょっと難しいかなと1人で見に行きましたが、子どもと一緒に今度は吹替版を見に行くのもよいなと思っています。

ちょっと疲れちゃったなという時や、もちろんゴールデンウィークの家族のお出かけにも。

リメンバー・ミー』おすすめです!