事業を成長させるマーケティングの本質

寒の戻りがありますが、桜が咲き始めましたね。

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春。日本人が特に好きな季節な気がします。たった10日弱、木いっぱいに咲き誇る桜、儚くも美しい。

卒業があって、始まりがある。そんな区切りの季節です。

さて、そんな区切りの折なので、なんとなくこれまでのことをまとめてみたくなりました。

新卒で勤め始めてから16年、4社を経験する中で、業界誌編集者、経営コンサルタント、オンラインマーケティングマーケティングリサーチャー、WEBメディア責任者など、様々な角度から”マーケティング”に関わってきました。事業の成長に奮闘する方々に少しでもお役に立てるかなぁと思い、1度その「マーケティング」について整理すべく、(同業の諸先輩方に読まれると非常に恥ずかしい限りなのではあるのですが)未熟ながらマーケティングへの私なりの理解をまとめてみます。

事業の成長戦略や、それを発信するコミュニケーション活動に携わる方々にお役に立てればよいなと思います。

マーケティングの本質とはお客様との「約束」

マーケティングという言葉は、わかるようでよくわからない、特に日本人にとって理解が難しい、腹落ちしにくい概念のような気がします。

簡単にいうと、そのビジネスが売れるようにするための活動、特に狭義では売れるようにするための認知・説得のコミュニケーション活動のように使われている言葉かと思います。

その定義もいろいろ存在しますが、私が気に入っているのは「マーケティングとは顧客との約束」という考え方です。

私たちはお客様にこういった価値を提供します、と宣言し、その約束を果たすまでをマーケティングの本質と考えます。

約束とは、相手がいます。

約束は守らないと信用を失います。

どんな約束にするかは、合意の上、自分たちで決めることができます。

コミュニケーション以前に大切なこと

これだと、抽象的で少々わかりにくいので、具体例をあげると、たとえば、「コインをモチーフに、爽快感のあるハマるスマホ向けパズルゲームで、お客様の隙間時間を楽しいものにします」というのがパズ億というゲームの約束でした。

その約束を果たすために、短時間でコインが一気に消える爽快感があったり、簡単に解けないステージにハマりこんだり、世界を旅するモチーフで楽しみが変化していくように設計し、まだ使ったことのないお客様には、「世界を駆け巡って億万長者を目指せ!爽快パズルゲームパズ億」というコピーとゲーム画面を見せるスクリーンショット、広告でアプリのインストールをおすすめしていました。

「ママたちが困っていること、楽しめることなど、必要な情報を提供することで、日本中の乳幼児を抱えるママたちを笑顔にします」というのが、cutaというママ向けWEBメディアの約束でした。ですから、ママたちが傷つくような表現は絶対しない、子育ての楽しさと辛さの両方にきちんと寄り添う、妊娠・子育て中のママが検索するキーワードを網羅した記事を作る、実際に子育て中のママたちが記事を作る、といった私たちなりのルールがありました。

「最短2クリックでアマゾン以外のECサイトでお買い物できる決済手段を提供することで、お買い物を安心・簡単にします」がAmazon Payの約束です。

というように、マーケティングの本質とは、キャッチコピーや広告などの「どのように伝えるか、コミュニケーションするか」以前に「誰に何を提供するのか」を定義することなのだと思います。

成長期のマーケティングは、潜在ニーズを手探り

特に私は事業(商品・サービス)の立ち上げから成長過程におけるマーケティングを担当することが多かったため、お客様は誰で、その人たちはどこにいて、その人たちが何に困っていて、何があれば嬉しいんだろう、私たちはそれを本当に提供できているのか?を探るのが、マーケティング活動の最初で、かつ戦略でした。

成熟期にある事業ならば、お客様はその商品に慣れていて、ニーズは一定明らかになっていて、いかに安くニーズを満たすかがキーになるかと思います。競合とのシェア争い、価格競争、価格を下げるための商品戦略がメインとなってくると思われますが、なにぶんニーズが顕在化していない新規サービスを担当する中では、いつも手探りでした。ただし、お客様の本質的なニーズに対する代替のサービスは何かしら存在するものなので、それに類するものを研究したり、ということもよくありました。

お客様と自分自身の「買いたい」理由を理解する

ただ、どんなに難しいことを語ったとしても、大切なことはシンプルで「それ、本当に時間を使って、お金払って買いたい?」ということなのだと思います。

そのためには、まずは自分の商品・サービスを買いたいという欲望をきちんと見つめること。お金や時間を使ってそれを手に入れることに、何を期待しているのか。なぜそれを欲しいのか、他ではなく、それを選ぶのはなぜか。そういう心の襞をよく見極めること。

たとえば、コンビニで、「いろはす」の小さい水のペットボトルを購入したとします。私はなぜ、これを買ったのか。小さくてコンパクトでカバンに入れやすいから。捨てる時にぺちゃんこにしやすくて軽いから。緑色のデザインがなんとなく明るくてナチュラルな雰囲気だから。ペットボトル1本にもこれだけの理由があります。

先日『映画ドラえもん のび太の宝島』を息子と見に行きました。毎週のドラえもんを見る中で、息子がずっと楽しみにしていたから。日曜日に時間ができたから。映画ドラえもん史上最高のヒットになっていると聞いたから。星野源の歌が聞きたかったから。川村元気さんの脚本に期待したから。(ドラえもんの感想はまた別記事に)

そのプロセスを経て、対象のお客様の心に沿った商品を、届けることが、マーケティングなのだと思います。 

ただ、もちろん、年齢、性別、生き方、価値観等々によってほしいものに対するニーズは違うので、自分とは違う属性のお客様が、何を求め、何を考え、そして商品購入に辿りつくのかを、友達や家族など身近な人をサンプルケースとして理解することも大切なのだと思います。マーケターはとかく商品購入体験にプロ化しすぎてしまう部分もあるので、普通の毎日を過ごす普通のお客様が、「なんとなく」ものを買うときの理由を見定めることは大切だと思います。

お客様の気持ちを理解する方法

では、さらに具体的にどうやって自社の商品に対するお客様の気持ちを理解するのか?

当たり前ですが、まずは競合や類似商品も含めて、自分で使ってみること。自分が対象者じゃないなら、身近な人に使ってもらったり、使っている人の様子をうかがったり、よく話を聞いたりすること。購入者の意見をよく聞いてみること。CSに集まる購入者の声によく目を通すこと。マーケットサイズを知るためには、アンケート調査などで数値的にもニーズの広さを見てみること。深いニーズや不満を知るためには、ロイヤリティの高いユーザーと低いユーザー、未購入者など属性を分けつつ、感情や行動の理由に理解を深めるインタビューを実施すること。マーケティングアクションに対する数値を見てみること。売れ筋商品や特に目立った購買行動に注目すること。それから、他社の優れた商品やサービスを体験してみること。日々の数値のアップダウンとその理由を見極めること。

そういうことを、これまでコツコツ山ほどやってきました。人の気持ちを知るのって、面白いですよね。マーケティングの醍醐味の1つはここにあると思います。

大雪の3連休や選挙の日に、モバゲーの入会者が通常時の3倍にも伸びた時は、「モバゲーっていうのは隙間時間を埋めるためのサービスなんだな」って驚きました。

結婚式場のコンサルティングをしているときは、結婚式場への覆面調査、100件以上行きました。チャペルの見学時、模擬挙式を実施して、音楽を流し、感動のリハーサルを体験させる方法は、模擬なのに感動させられました。

 

「誰に何を提供するのか」がマーケティングの第一歩

私たちが価値を提供したい人は誰で、その人たちはどんなことを考えていて、だから何を提供することでお役に立ちたいのか、それを明確に定めること。それがマーケティングの第一歩です。その上でメッセージが決まり、マーケティングのアクションが始まります。

(具体的なメッセージやアクションについては次の記事に回します)

概念的な話ばかり、そしてよく考えると、なんとも当たり前の話ばかりになってしまいましたが、マーケティングの仕事をするときに私が大切にしていることです。

お客様にとっての価値を創出すること。そういうことをやりたいなと。

マーケティングとは、とても魅力的な仕事だとも思います。