高齢妊娠をきっかけに見つけた、新しい生き方と働き方

女性活躍推進が謳われ始めて久しく、働く女性はますます増え、晩婚化・晩産化も進む現代。23区内では待機児童問題も相まって、私が1人目を出産した2012年にはまだまだ珍しかった、育休から数ヶ月での早期復帰(当時の奮闘ぶりは以前こんなふうにまとめていただきました

DeNAの母がつかんだ、時短"一流の作法" | ワーキングマザーサバイバル | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

)も、保活激戦区の都内ではもはや当たり前になり、育休1年取れる人なんて一体どれほどいるの?というような状況です。

タフな働く女性が増えた一方で、男性の育休も社会問題に。働き方改革にはまだまだ程遠いのが実情とは感じられますが、元号も変わった令和元年、改めて、もう少しどう生きてどう働くかを考え直してもいいのでは、と思うような出来事が私自身にありました。

 
それは、30代後半の高齢妊娠(正確には第二子の30代後半なので、高齢出産とは言わないのですが、体感としては“高齢”でした)。
1人目と7歳離れての妊娠でした。2人目はもう無理かなぁと諦めかけた矢先だったので喜びは大きかったものの、束の間のうちにひどい悪阻に襲われました。
 

辛い妊娠悪阻に、生き延びるのでせいいっぱいの日々

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空腹を感じると吐き気と嘔吐。食べたら食べたで血糖値が上がるのかまた吐き気がして、1時間ぐらいは横になったまま動けない。お風呂に入って温まると吐き、夜中も吐き気で眠れない。スマホを見てもPCを見ても気持ち悪い。長時間の会議も座っていられない。土日はほぼベッドに寝たきり。
24時間絶え間なく続く吐き気、嘔吐に、「死んだほうがマシだ…」と本気で考えるほどでした。
 
しかも、折しも仕事は、大型プロジェクトのローンチ直前期。会社中、誰もがピリピリと必死で奔走する中、体力が半減以下の私は、もはや業務に使える時間も体力も、能力も削られてしまって、つわりピーク時は本当に使い物にならず、迷惑ばかりかけていました。
 
しかも、迷惑をかけてしまうことに、先回りして「これはできない」と調整に回る気力にも欠け、自分宛のslackのメッセージに怯える日々。slackアプリの右上に付くプッシュ通知の赤丸を見るのも嫌でした。
もちろん、妊娠の事実と捌ける業務量に制限が出てしまうことは、上長、チームに伝えていたものの、たぶん、自分で予想していたよりも、キャパが下がっていることに対応しきれていなかったのだと思います。
 
あまりの辛さに、かかりつけの産婦人科医に休職したい旨を相談したものの、「悪阻は病気ではないので、休職を医師として勧めることはできない」といわれ、絶望的な気持ちに。
なんとか少しでも軽減する方法はないものかと、鍼灸、妊婦専門のマッサージ、漢方医など代替医療も含めたクリニック&サロンラリー。貧血もあったので内科にも行き、結果そこで「妊娠悪阻と貧血、それにちょっとうつ状態だね。心療内科にも行ったほうがいい。休職の診断書を出しますよ」と言われ、ひとまず2週間の休職をすることになりました。おそらく妊娠うつでした。
 
さらには、食べられる物が極端に少なくなり、コンビニ弁当や出来合いの惣菜、にんにくの強い匂いのするものやべっとりと酸化した揚げ物とかは食べられないので、本当に食べるものに困りました。
最終的には、実家の母に上京してもらい、2週間、3食を作ってもらってやっとまともに食べれるように。味噌汁と新鮮な惣菜と、ごはんとおかず。
ただそれだけの普通の食卓がいかにかけがえないものかと身にしみて感じました。
 
クリニック&サロンラリーの結果、小半夏加茯苓湯という漢方が少しだけ効き、貧血対策には鉄剤の注射を打ってもらい(鉄剤の薬は吐いてしまって飲めませんでした)、さらに東洋医学では頭を冷やし(気逆と呼ばれる、赤ちゃんの熱が頭に上がってしまう状態だといわれた)、2週間の休職と、2週間の在宅勤務の後に、やっとなんとか出社ができるようになりました。
 
もう妊娠発覚からの数ヶ月は、本当に生きているだけで精一杯でした。
そして、どうしてこんなにひどいことになったのだろうと考えました。
 

健康をないがしろにした、仕事中心の生活スタイル

そもそも、この2年ほど、短期間で2度の転職をし、相当仕事に力点を置いた生き方をしていました。子どもも大きくなり、それほど病気をしなくなったのもあり、夜間保育の充実した保育園に子どもは預けきり。好き嫌いの多い息子は、夫が与えるラーメンや唐揚げ、餃子、焼き鳥など味の濃いものばかり好むので、少しずつ私の料理も、「とりあえず息子が食べたいものを食べればいいや」とそういった子どもが食べるものばかりに寄っていました。また、自分自身にきちんと食べさせる、みたいなところまで気が回らず、ともかく息子に食べさせなければ、ということでせいいっぱいでした。
 
頭は常に仕事でフル回転、24時間仕事のことばかり考えていました。
(よく妊娠できたものだとも思いますが)それらの生活はもう1つの新しい命を育てる上では非常に不適切だったのだなと。子どもの好む食べ物は、妊娠後の私は全く受け付けられず、仕事のことを考えると吐き気が込み上げてくる。命を育むには、あまりにも不健康だったのでしょう。
 
ベテラン助産師のブログを読む中でも、「悪阻がひどくなる人の性格・生活」のチェックリストにほとんど当てはまり、改めて、「こんなの全く人間が人間を1人創り出せるような生活じゃないわ」と思いました。
 
休職後の復帰後も、吐き気はかなり軽減したものの、ずっと体調は不安定で、午前中は身体がだるくて起きられなかったり、腰痛が辛かったり、夜もよく眠れず、何度も目が覚めて眠れなくなるし、夜中に足が攣ったり、食事後に極端な眠気に襲われて動けなかったり、妊婦健診では疲労で尿蛋白がで続けているし、…と次々起こるマイナートラブルの連続。
お腹が大きくになるにつれて、貧血は悪化し、坂道や階段が極端に辛くなり、歩くスピードは亀並み、通常12以上必要なヘモグロビン値は7.9に。「これはフラフラで倒れちゃうレベルですよ」と助産師さんには言われ、急遽、鉄剤の点滴と薬を服用したりもしました。
 
挙句に、ある日には、昨日まで元気に暴れてたお腹の子供が動いていない!!と青ざめ、お腹の中で死んでたらどうしようと病院に駆け込みました。(結果的に、眠ってただけみたいで問題なかった)
その出来事を通しては、ともかくもう、命さえ無事で生まれてくれればそれでいい、と祈るような気持ちにもなりました。
 
前置きが長くなりましたが、こんな毎日の中、私の中で大きく変えて学んだことが、2つありました。それらは、このように極端な状況だからこそ、変えられたことだったのかもしれません。
 

変えたこと1:自分で自分に満足に食べさせる

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まず1つ目は、食事を変えました。
ともかく食べられなくて、でも食べないと気持ちが悪いので、食事を根本から変えざるを得なかった。
 
スーパーの惣菜でもコンビニ弁当でも冷凍食品でもよかったのが、全部無理になって、母の普通の温かい家庭料理が、1番食べられました。
母が帰った後は家庭料理を自分でも再現できるように、まずともかく素材の調達だ、と有機食材の中心に週1の生協できちんと注文するようになりました。それまでは、外食や中食で食材を使い切って管理し切れないのと、注文してからすぐ届かないので面倒だと思っていたのですが、とりあえずすぐ調理できて美味しいと思える食材が、常に冷蔵庫にある状態を作りました。
それから、レシピを見て料理を考えたり作ったりするのが面倒なので、ちょうどヒットしていた有元葉子さんの『レシピを見ないで作れるようになりましょう。』のシリーズを読んで、普通で簡単だけど自分がおいしいと思って食べられるものを、短時間に作れるようになりました。(具体的な料理法については別記事に譲ります)
 

 
そうしたら、劇的に、生活が変わりました。以前も別に料理をしないわけではなかったのですが、やる気がなくて、まあなんか食べられればいいや、というなげやりなものだったのが、「今日妊婦の私も落ち着いて食べられるものを作らなければ」というモチベーションができ、母の料理というモデルケースを目指して、ともかく毎日普通におうちで食べられるようにしました。料理も習慣なので、毎日食材を見て、調理していればそれなりにもなるものです。
結果、自分で自分に満足できるように食べさせることができる、という能力は、改めて強力なスキルなのだなと感じました。
ちなみに、独身の女性と男性だと、女性の方が圧倒的に幸福度が高いという調査結果をどこかで見ましたが、それはおそらくこの「自分に食べさせられる能力」の有無によるものではないかと思います。
 
また、付随する効果として、息子にも同じものを食べさせるようになったので、圧倒的な偏食を少しずつマシにしていくことができました。やはり、健康的に食べる能力というものも、小さい頃から培われるものですから、このタイミングで変えることができて、本当によかったと思います。
あのままだったら息子は若年メタボにまっしぐらだったかもしれない。また、息子は気の向いた時には料理の手伝いもし、また野菜を食べさせるために栄養のことも教え、まだまだ好き嫌いはありますが、ともかく一口は食べる、というルールを守れるようになりました。いわゆる、食育です。
 

変えたこと2:得意な仕事だけする

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もう1つ変えたことは、仕事の内容です。休職をきっかけに大幅に仕事を減らしてもらったため、実際に周りのメンバーには相当迷惑をかけてしまいました。そしてその分、何とか他の人が不得意で自分には比較的簡単で役に立てることをしようと、貢献点を必死で探したのでした。
 
そのなかで見つけたのは、比較的細かい性格なのと、数字は得意なことから、マーケが使う予算全体の管理、費用着地予測と経営企画・経理とのすり合わせ、それから、マーケティング活動の成果の分析とマネジメントへの報告資料作成、それから、得意のマーケティングリサーチの設計・実査・分析と示唆のクリエイティブへの反映、会議の調整、キャンペーン直前で施策実行に必死なメンバーの間に落ちるこぼれ球を拾うこと、新しく入ったメンバーのサポート。チーム内のメンバーとメンバーの隙間を埋めるような仕事に徹することで、なんとか価値を探しました。
 
できるけど苦労する仕事と、自分には比較的楽にできて役に立ちやすい仕事なら、なるべく後者に寄せることを心がけることで、むしろ感謝されることが増えたような気もし(気を使ってくださっただけかもしれませんが)、高齢妊娠期のキャリアを何とか乗り切ったといえるのかもしれません。
 
(実際のところ、働きの悪い私を鬱陶しく思った人もきっといるだろうとは思いますが、何も言わず、日々ヘロヘロな中でなんとかチームにいさせてもらえて感謝しかありません。)
 
結果、入社当初から1年をかけて練ってきたメルペイローンチキャンペーンの成功を期末までしっかり最後まで見届けることができ、微力ながら貢献できたことは、私にとって大きな財産にもなりました。まだ世の中に浸透していない成長期のビジネスの、0→1の立ち上げのマーケティングという難易度の高い課題を、どう成功に導くのか、というのを体感できたことは、本当によかったです。
 

組織と個人の幸せな関係とは

この約半年を通じて、重い体を引きずりながら、組織で働くということは(前提として周囲の理解と温情があってのことですが)こうやって役割分担をして補い合うことなのだとも感じました。
 
また、キャリアには、できることが少ない若い時期には、何でもやってみてできることを増やしていくことも重要ですが、一方で、特に個人のライフステージ上、仕事が制限され拡大が難しい時期には、キャリアを絞り込んで強めていくこともまた、重要なのかもしれません。不得意なことを無理をして行ってパフォーマンスが出ないよりは、得意なことを周りに役に立つかたちで行う。実はそれこそが、個人が社会で働くときに考えるべきことなのかもしれません。
 
今の日本社会を見回したとき、人手不足はますます進んでいき、そうすると一昔前の24時間働けます、な専業主婦に支えられたモーレツサラリーマンの比率は下がっていきます。
乳幼児を子育て中の共働き夫婦は増えていきますし、家族の介護を担う人も増えていくでしょう。外国人労働者も高齢人材も増えていきます。
様々な事情を持つ人たちを活かしながら組織として最大のパフォーマンスをあげて運営していくには、人それぞれの個性や強みの中で組織にとって役立つ部分を活用し、チームとして運営していくことが必要になってくるのでしょう。
 
また、個人としてのキャリア形成としても、単純な労働時間だけを貢献量とはせず、働きの質を上げるために、個人の資質をよく見極めた働き方を探すことも大切なことなのかもしれません。
 
もちろんできれば、フルタイムで100%コミットする働き方ができればいいけれど(そうしたいときもそうしなければならないときもあるけれど)、一方でそうではない時期がくるかもしれず、そのときに仕事を辞めざるを得ず社会から完全に弾き出されてしまうのではなく、小さくとも貢献できるような柔軟な組織を作りたいものだなと、思いました。
そういう新しい時代の組織作りを実現してくださった、私の上司にも、本当に感謝の気持ちでいっぱいです。
 
ちなみに、今回のことで私自身はファイナンスに興味を持ち、産休育休中には会計の勉強をし、マーケティングファイナンスを掛け合わせたような専門性を身につけていけないかと模索しています。こうやって自分の適性をさらに探ることができたことにも感謝をしています。
 
今回の高齢妊娠に限らず、たとえば障がい児の子育てや、自身の病気、親の介護や看取り、パートナーとの離婚や死別、小学生以上の子供の不登校など、長い人生の中では業務に支障の出るような比較的大きなハンディを持つこともあるかもしれません。
その時に、キャリアを簡単には諦めず、継続する方法を模索することも考えていただきたいな、また、それを受け止められる柔らかい社会であってほしいなという願いを込めて、この記事を書きました。
 

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マーケティングリサーチを事業に役立てるための7つのコツ

DeNAに7年、アマゾンに半年、メルカリグループのメルペイ1年と、約9年間に渡ってIT企業でマーケティングに関わる様々な仕事をしてきました。

 
その中で、特にDeNAで約2年、直近のメルペイで約1年、マーケティングリサーチを活用して様々なカテゴリのサービスに対するユーザーの心理を見つめ、現状や事業成長の可能性を把握し、マーケティングや経営の方針作りをサポートしてきたこともあり、改めてリサーチの使い方を振り返ってみたいと考えました。
 
また、個人的には、来月7月から産休で一旦お休みに入るというタイミングでもあり、なぜか最近「リサーチについて教えてください」と言われることも多かったこともあり、リサーチの上手な活用法についてまとめてみようと思います。
 

マーケティングリサーチに関わる多くの誤解

さて、マーケティングリサーチというのは、「ああ、アンケートまとめるやつでしょ」「お客様を連れてきて、話聞くやつでしょ」と考えられる方も多いかもしれません。確かに、実際こういった調査の入り口としては、GoogleフォームやSurvey monkeyなど無料のアンケートツールでアンケートを作って、そのURLを100人にメールで送って、返ってきた結果を集計すれば、立派なアンケート調査(定量調査)とは言えるのかもしれません。また、身近な友達や知人に時間をもらって、「このサービスどう思う?」と意見を聞いてみれば、それも立派なインタビュー(定性調査)になるのかもしれません。
しかし、ただ、それだけでは、マーケティングリサーチとしては、不十分だなぁというのが、100を超える調査を担当してきた私個人の印象です。一体それはなぜでしょうか?
 
また一方では、リサーチを一定使い慣れた方の中には「リサーチやっても優れたサービスはできないよ。意味ない、意味ない」とおっしゃる方もいらっしゃいます。センスある職人肌のデザイナーさんとかプロデューサーさんに多いかもしれません。また逆にリサーチ結果を一時的に熱狂的に信奉する方も、たまにいらっしゃいます。大体、数字に強い理系の方です。
あと、さらには「リサーチなんか、偏った嘘の数字の集まりだ」という方もいらっしゃいます。「ITサービスでは、ユーザーのアクティビティデータが生のデータなんだから、SQL叩いて出てくる本物の数字があれば、アンケートやインタビューなんていらない」という方もいらっしゃいます。データ分析に強い方に多いかもしれません。
 
いずれも、リサーチという手法への理解が不足した、ちょっとした暴論だなぁと思います。
 
確かに、私自身もこの手法を身につけていく中では、「調査だけではサービスはよくならない」と悲観的に思った時期はありました。が、多数のサービスで多角的にこれらの手法を活用するなかで、やっぱりリサーチは面白いし、本当のコツを知った人が上手に使えば、マーケターや経営者にとって、優れたツールだなぁと改めて思うようになりました。
 
それでは、上手にマーケティングリサーチを活用するには、一体どのようなことに気をつければよいのでしょうか?
下記の7つにまとめてみました。
 

1、適切な対象者のサンプリングを行う

まずは何より大切なことは「誰を対象にして調べるか」です。よくあるNG例が、「友達にアンケート送って100人のデータ出しました!(イヤ、それ、実際対象にしたいターゲット層とはズレた人たちが来ちゃってますよね?)とか、「1000人のデータなのでボリュームは大丈夫です!」(人数はいいんですけど、実際の人口構成比よりも若い人が多すぎません?)とか、「会社の友達に聞いたら、こう言ってました!」(一部上場企業のエリートですよね…その人の意見ってマス層ではないですよね?)みたいな例です。
 
定量調査では、ちゃんとした調査会社なら、年代の偏りを正すために、性年代別人数を日本の人口構成比に合わせてスクリーニング(対象者を集める)しますし、定性(インタビュー)調査でも多数の属性の中で、条件を絞って自社サービスの顧客となりうる代表的な人物像をリクルートして調査に臨みます。
大事なことは、調査内容よりも、調査結果よりも前に「誰に調査をするか」なのです。
また、仮にあえて偏りのある人を対象とするなら、それを前提として念頭においた判断をすべきなのです。
 
また逆に、定性調査の結果を「どうせN=1の意見でしょ、そんなん参考にならない」というふうに考える方もいらっしゃるのですが、そのNが誰であるかは、上記の通り、たとえば3000人のうちから適切な対象者を選んでいる、そういった俯瞰的な視点を前提に置いていることを理解していないからなのです。(ただ、定性調査のリクルートに無自覚な調査も多いので要注意)
 
調査を実施する際は、上記のような観点を理解し、適切な対応ができるリサーチャーを活用することをおすすめします。
 

2、仮説とその後の施策方針を持って調査を行う

調査に振り回されてしまったり、調査の活用が不十分な場合によくあるのが、とにかくなんとなく調べたいことを聞きまくる、調査です。アンケートやインタビューで「これも聞いといてください!」と項目を増やしていくけど、それがわかったからといって、実際、事業の施策に全く反映されない、「So what(だから何)??」な設問が多い場合です。
その質問からどういう答えが出ると思っていて、仮にそれが証明されたとしたら、そのあとどう施策に落とそうと思っているのか、その方針はありますか?
ないなら、調べるべきではありません。調査は一般的に一定の金額とリソースのかかるものなので、その設問1つ1つは事業に資するものであるべきなのです。
 
逆に、過剰な期待もしてはいけません。
調査で新しいアイデアが出てきたり、何か素晴らしい結果が出てくると期待をするのも的外れです。調査から導き出されるのは、リサーチャーや調査の発注者の頭の中にある仮説の検証です。
何かアイデアがあるなら、アイデアを検証できるかたちにまとめ、それを対象者に見せて質問をしましょう。
 
仮説が命です。調査の前には、何を知りたいのかを本気で考えることです。
 

3、対象者を、仮説に誘導しない

インタビュー調査に不慣れなモデレーター(質問をする人)に多いのが、自分の仮説に対象者を誘導してしまうパターンです。
たとえば「このサービスを使ってみたいですか?」とモデレーターに聞かれたとき、多くの場合、特に気の弱い人ならなおさら「そうですね」と答えてしまうと思います。
でも、だからといって、その人が実際にそのサービスを使う確率は、高いとは言えないでしょう。
なのに、この「そうですね」を真に受けて「調査で使いたい人が5人中4人いました!」と社長に報告したとしたら、それは完全な判断ミスにつながり危険です。
 
さらに、その理由を問う時に「それは〇〇だからですか?」と質問するのもナンセンス。仮に正しくなくても、聞かれた人は「そういう理由もあるかもしれないな」と考え、「そうですね」と答えてしまいがちです。
 
正しい質問の仕方は、前者の場合、「使ってみたいか、使ってみたくないか、どちらですか?」と両方の選択肢を示すことです。もっと明確にするなら、「このサービスを使ってみたいか、使ってみたくないか、5段階でお答えください。5ぜひ使ってみたい 4やや使ってみたい 3どちらでもない 2あまり使いたくない 1全く使いたくない だとしたら、どれでしょう?」(5段階の定義は場合によって変えます)という聞き方を私はよく採用します。
 
後者の場合は、まずは「その理由はなぜですか?」で、もし、答えあぐねている場合は、3つ以上の選択肢の具体例をあげて「たとえば〇〇とか、××とか、△△とか…」と幅を持たせます。
基本は答えを限定しないオープンクエスチョン、これがリサーチの原則です。
 

4、目的に応じて、手法を使い分ける

マーケティングリサーチといえども、定量的なアンケート調査と、1人ひとりの心理を掘り下げるデプスインタビューとは、手法が違い、得られるアウトプットも違います。
また、近しいカテゴリでは、ユーザーのデータ分析や、シミュレーションともまた少し違います。
それぞれの癖と使いどころを理解して、目的に合わせて上手に活用しましょう。
 
まず、ユーザーの心理を深く理解したい時には、デプスインタビューです。特に、アンケートでは見えない、購買や行動の背景となっている理由を理解し、深く突き詰めるには、1対1での場がおすすめです。複数モニターの座談会形式もありますが、人は見栄を張ったり、場の空気に影響されたりしやすいものなので、基本は私は1on1を好みます。
 
市場規模や潜在的なユーザー層のボリュームを把握したい時は定量調査を、特に、サービスのローンチ前などに、まだ自社サービスの利用者ではない人まで含めて、また、競合の利用者も含めて、今後の顧客拡大の可能性を知りたい時は、アンケート調査がおすすめです。
 
逆に自社サービス利用者の過去の行動を理解したい時は自社データを分析すべきです。また、特にロイヤリティの高いユーザーを理解したい時は、外部のアンケートでは出現率も低いため、自社サービスのユーザーに直接アプローチしてお話をうかがうのがよいでしょう。
 

5、集団と集団を分ける、境目を見極める

定量調査を分析する際に、大切なことの1つとして、行動や嗜好の違いを生み出す、「境目」となる特徴を見出して、それを分析に生かすことです。
定量調査の結果は、単純集計表という、結果を単純にまとめた集計結果の他に、クロス集計表といって、ある設問の結果でグループを切り分けて、その結果を比べてみる集計があります。
 
たとえば代表的なものとしては、年齢性別。当たり前ですが、多くのサービスで世代や性別でのギャップは出てきますので、性年代で切り分けることは示唆が大きい場合が多いです。
また、ゲームやエンタメなど可処分時間を取り合うサービスでは、既婚未婚、子供の有無で大きく差が出てきます。
金融サービスでは、当然ながら年収帯でサービスへの態度は変わります。合わせて職業でも大きく違いが現れます。
 
このように、サービスに対する態度の変わるユーザー層を切り分けていくことで、「このサービスは独身の男性に特に利用されやすいサービスだ」とか、「年収の低い層ほど利用意向が高い」「未就学児を持つママさんに愛されているサービスだ」などのように、より自社サービスとの親和性の高い属性が見えてきます。それがわかった上で、その層の特に代表的な人に、インタビューに来てもらい、詳しく話を聞くことで、展開方法を探る、といったことを行うわけです。
 
日本市場であれば約1.3億人のうち、一体誰が、なぜ、自分たちの顧客になってくれそうで、そのために、何が必要なのか、俯瞰的かつ深い理解を促すのが、このリサーチの活用方法なのです。
 

6、誤差を理解し、最低必要なサンプル数を確保する

当たり前ですが、アンケート調査には一定量の誤回答が含まれます。適当に答えても誰にもバレることもないですし、悪意なく、嘘を回答してしまう人は一定存在します。体感的にはサンプルの10%程度は嘘が含まれるような気がします。
でもだからといって、全ての結果が当てにならないとは言えないですし、逆に、すべてを鵜呑みにしてしまうのもよくありません。
ですから、なるべく誤回答が出ないように調査設問・選択肢・回答条件等を設計する必要がありますし、結果を活用する際の態度として、端から端まで全て真実だと考えないことが重要です。
 
また多くのアンケート調査は、対象となる日本人全員に対しての全数調査ではなく、それを代表する人を一部(100人とか1000人とか)抽出してきて全体を類推する標本調査であるため、サンプル数が少ないほど、真の数値との誤差は大きくなります。ですから、サンプル数は多いにこしたことはありませんし、目安としては、クロス集計した1つの集団ごとに、できればサンプルが100を切らないように、どんなに少なくとも30-60ぐらいは確保するのが大切です。
 
また、たとえばAとBとどちらがよいかと調べるときに、専門的には統計的有意差があるかどうかを確認します。「結果に差があると言えるためには、○%以上の差分が必要」といった考え方です。詳しくは、専門家に聞いてもらう方がいいとは思いますが、大抵の調査で1、2%は誤差の範囲です。ですから「Aは31%で、Bは32%なので、Bにすべきです!」といった分析はナンセンス(正しくはAとBは同程度で差はないと解釈すべき)なので、お気をつけください。
また、余談ですが、調査結果を"32.8%"など、小数点以下まで記載するのは、ほとんど意味がありません。なぜなら小数点より小さい数字など、明らかに誤差の範囲だからです。結果が読みにくくなるだけなので、調査レポートでは小数点以下は四捨五入しましょう。
 

7、リサーチを簡単だとは思わない方が良いかも

最初に書いたように、アンケートの設問を作って結果を集計することも、誰かにゆっくり話を聞くことも、手法としては難しいものではないので、ある意味ビジネスマンなら誰にでも簡単にできることのように感じられます。
ですが、実際には、これまで述べたような「誰に」「どのように」問うかによって、また、どのように分析するかによって、データは大きく歪み、全く逆の結論を導いてしまうことがあります。
特に、思い込みの強い人が恣意的に関わると、数字を大きく捻じ曲げてしまうことにもなりかねません。
手法は難しいものではないのですが、その活用の仕方によっては諸刃の剣。
ですから、事業の方向性を決定づけるような判断に際しては、やはりスキルと経験のあるリサーチャーに任せるべきですし、また、経営者はこの手法の効果的な活用法を、理解しておくべきだと思います。
リサーチは、難しいものではないですが、簡単ともいえないものなのです。
 
とはいえ、活用法を理解すれば、ユーザーへの理解を身につけるための、心強いツールとなるものです。そして、サービスをよりよく成長させ、多くの人々に届けるための羅針盤となるのかもしれません。
 
以上、拙いですが、短い期間ながら猛烈のスピードの早いIT企業で膨大な量のマーケティングリサーチを活用してきた人間としての、コツまとめでした。
 
これからも、マーケティングが世の役に立ち、人々の幸せに貢献しますように。
この記事が微力ながら、お役に立てることを願います。

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よい商品とは何か。

人の幸せに貢献するよい商品を作ることと、それを多くの人に伝えることって別だなぁと思います。

私のマーケターとしての歴史は、「商品の良さを見出して、多くの人に伝えること」だと思ってやってきました。でもその過程で何度も感じたのは、「商品をもっとよくしてから、お客様に伝えた方がいいのではないか?」ということでした。

だから、「本当に良い商品とは何か?」を探ることにもっとフォーカスすべきではないかと、思うのです。

不便だなと思っていることが、楽チンになるもの。

悲しみが、癒されるもの。

痛みが、和らぐようなもの。

では、人が不満を感じる部分はどこにあるのか?

 

おそらく私が最も気になる、人の「不」とは、心の悲しみ、痛みなのではないかと思います。そして、心の悲しみは、時間をかければ乗り越えることができると、信じています。

でもとても難しくて、変えられないことがあります。

心が閉ざされて凍りついてしまったとき。

自分を責めて、じわじわと首を締めるような気分になってしまったとき。

心を苦しめる、疲労や健康上の問題があるとき。

変えられない環境の中にいるとき。

そんな中で人はどうやって、立ち直るのか。

それは、環境から一時的にでも逃れてみたり。

立ちはだかる問題を、ひとつひとつ分解して、ひとつひとつ解決していったり。

自らを責める、根っこの原因を見つけて、見つめ直してみたり。

 

そうやって、人は、また強く、生き延びるのだと思うのです。

問題を解決し、人が希望を見いだせるようにしたい。

私はそんなふうに働きたいと思っています。

働くママの取扱説明書:子供を生んでから変わったこと

息子がコマなしで自転車に乗れるようになりました。
ランドセルを買いました。
鉛筆をもって字を書く練習をしています。
来年小学1年生になります。

ふと、随分大きくなったものだなぁと思います。

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振り返ると、やっぱり子供が0〜2歳ぐらいの時期が最も大変で、働くママとして悪戦苦闘した時期だったと感じます。

私が働きすぎると子供が熱を出し、子供に集中しすぎると仕事が滞り…と人並みですが、とはいえそのシーソーの間を行ったりきたりする期間は、きっと本当に大変だったんだなぁと思います。

イチバン大変だった時期のことは、なんだか記憶ももやの中のようで、もはやはっきり覚えていないぐらいなのですが、とはいえ、ふと「これはママリーマンの思考のクセだなぁ」と思う、「子供が生まれてから変わった働き方」が体に染み付いています。

ふとそのことに気づく機会があったので、ここでシェアしてみようと思います。

子供が生まれてから変わったこととは。

伸びるものに注力し、工数と価値の見合わない仕事は、無意識に圧縮する

子供が生まれる前よりも、圧倒的に仕事に使える時間が減ったこともあり、本当に「時間」に対する意識が敏感になりました。

仕事の時間が大量に取られそうな割に、あまり成果が見込めなさそうなことは、始まりそうな瞬間から敏感に察知して、なるべく「成果の出そうなことにフォーカスする」というクセがつきました。

これは、子供を持った人に限らず、自分の働く時間を超えるタスクに忙殺されたことがある人ならば、割と持っているスキルだと思うのですが、「あ、これはヤバい」「無駄に時間が取られそうだ」「なるべく成果の出そうなこれに寄せよう」とする傾向があります。

わかりやすい言葉にすると「生産性」とでもいうのでしょうか。

子供は全く親の仕事を考慮せずに泣くので、どうにかこうにか仕事を小さくコンパクトにしながら、一方で、「ちゃんと役に立たなきゃ」という気持ちも強いので、どこで価値を出そうかと試行錯誤します。

DeNAの同じく働くママさんが、“働くママが発揮すべきは「フルパワー」ではなく「フルバリュー」”と言っていて、いいタイトルだなぁと思ったのですが、まったく同感で、全力でやるんじゃなくて、価値をマックスに出せるようにする。大事なのは「価値があるかないか」「役に立てているか」。

キャリアの一時期にとにかくガムシャラにがんばらなきゃいけない時期があって、それは私自身の資産にもなったと思うし、そういうカルチャーで一体感を高める会社ももちろんあるとは思うのですが、「人より長く会社にいるか」「ともかく動いているか」「ともかく走っているか」「ともかくたくさんやったか」を問われるのは非常に辛い。今の自分は、そこで戦っても決して勝てないですから。

このことは、よくも悪くも、自分の仕事の枠を狭めるものではあると思うのですが、とはいえ、どんなに寝ないで仕事しても1日24時間しかないという「枠」があるのはすべての人に共通なので、それを小さく持っておくことも、悪くはないんじゃないかなと、今は思ったりもします。

ですから、逆にいうと時間を浪費する人が苦手です。無駄な会議も辛いです。もちろん全てが効率を優先して、進められるわけではないこともわかっているのですが、できれば非効率はなるべく圧縮していく方向へ改善したい。

また、船井総研時代の教えで「長所伸展」「伸びているものを伸ばす」といった考え方があるのですが、(これは非常に効率的な教えであったと思うのですが)おそらくそれも染み付いていて、人を育てる時も、事業を育てるときも「伸びているもの」「伸びそうなもの」に力を入れるし、また、DeNAでのマーケ時代に培ったCPA(1人獲得あたりのコスト、今はCPIということも多そう)をなるべく小さく、そして獲得数全体を大きくするための思考回路が頭に入っています。

事業の責任者だったときも、リソースもコストも限られた中での、ユーザー数の拡大目標が非常に高かったので、同じく「伸びないところに力を入れている暇はない」という根性が染み付いています。女性ばかりのチームで、なんとかみんなが辛くならないように、そしてユーザーに喜んでいただけるサービスを作るために必死でした。

そんな諸々の結果、たとえ小さくても誰かが喜ぶ価値のある部分を拡大することにフォーカスし、逆に誰からも大して喜ばれない部分には、やっぱり力を入れたくないのです。

というわけで、本気で働くママリーマンに対して、時間を潰すような仕事を与えるのは人手の活用法としてイマイチだし、労働時間を求めるのももちろんNG、むしろ、価値を出すことを求めてください。

ひとりの時間を愛している

子供が生まれてから、1人でランチに行くのが好きになりました。
何もなくお茶を飲んでる時間が幸せです。
美術館や映画館で、1人でぼんやり絵や映画の世界に浸れるなんて贅沢の極み!

人と過ごすのももちろん楽しいのですが、ひとりも嬉しいと思う。
これは働くママの特徴かもしれません。

なぜかというと、普段はいつも子どもを中心に誰かのことを気にしているから。

ちゃんとご飯食べたかな。寄り道せずにまっすぐ歩いてくれるかな。おもちゃ片付けたかな。気にかける存在があるのは幸せなことであるかもしれませんが、一方で誰のことも気にせず、気を使わず、たった1人の世界に、一旦休息できることって、本当に有難いことなのです。文字通り、有ることが難しい、の有難しなのです。

子供を愛しているし、他の人といる時間も楽しいけれど、たまには1人も幸せ、働くママってそんな感じです。

旦那様、たまには奥様にひとりの時間をプレゼントしてあげてください。そこは専業主婦も働くママも変わりません。思っている以上に喜ばれるかもしれませんよ。

ままならない人間関係もイヤイヤ期の子供よりマシだなと思うようになった

子育てをした人なら、多くの人が通る道なのだと思うのですが、2歳前後の子供というのは、ともかく頑固で動きません笑

(まあ、気の強い私と、さらに気の強い旦那との間の子ですから、我が家で最強に気が強い人間なのですが)

保育園の送り迎えに、10分の道を、もうそれこそ何時間もかけて連れていったこともありますし、ともかく「思い通りにならない!話しても通じない!」の連続です。

なので、思い通りにならない人間関係も「魔の2歳児」よりはマシだな、と思えるようになった、というのがある気がします。

もちろん、それでもイライラはしますし、忍耐力が試される場面は多くあると思いますが、それでも、相手が「何がイヤなのか」「どうしたいのか」を理解し、そして、言葉を尽くして、あの手この手でコミュニケーションをとる、という素養が以前より身についた気がします。まだまだですけどね。

 

というわけで、みんながみんな、私と同じ考えとは限りませんが、働くママを活用する際の取扱説明書的に、特徴をご紹介しました。

これからの人手不足の時代に、24時間働けます!という男性の獲得が難しくなるなかでは、ぜひ上手に働くママを活用してくださいませ。

マーケターの過去と未来をつなぐ場所、マーケティングアジェンダ2018

先日「マーケティングアジェンダ」という3泊4日で日本のマーケター(ブランド:事業会社のマーケティング担当と、パートナー:ソリューション提供者の双方)が集まる合宿形式のカンファレンスに参加してきました。

マーケターが集まるこのカンファレンス、実は(特にブランド側にとっては)丸々3日間朝食から夕食までみっちりスケジュールが埋まっている、なかなかタフなカンファレンスなんですが(忙しくてなんかちょっと痩せました笑)、その分の実りある会でした。

その一端をご紹介します。

マーケティングアジェンダ、行ってよかった!

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私自身の参加のきっかけについては、実は、直前に上司がどうしても参加できないということで急遽参加をすることになったため、具体的にどういう会なのかよく理解できておらず、知り合いもそれほどおらず、航空券が取れたのは出発前日、名刺が足りないけど印刷が間に合わないので一部キンコーズでコピーというような状況で、沖縄に到着するまでかなり不安でした笑
 
・・・が、結果的に、行ってみてとてもよかった!
何がよかったというと、下記の3つです。
 
・出会える人とそこで交わされる話題
・会全体の場づくり、雰囲気作り
・脳を刺激するトップマーケターのKeynote講演
 
具体的にご紹介していきます。
 

日本中で真摯に顧客に向き合っているマーケターが集まる

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 何がよかったかというと、1番目にあげられるのがどこで出会えるマーケターの方々です。さすが皆さんマーケター、一癖あったり、飛び抜けて頭の回転が早かったり、実直に顧客に向き合っていたり、でもやっぱりコミュニケーションや人の心に触れる何かに特化していて、それぞれ魅力的なんです。

ブランド・パートナーの方々含めて、「この方と話が合いそう、今じゃなくてもいつか一緒に仕事ができそう」という出会いが多く、嬉しくなりました。

そもそも相当の大企業でなければマーケターの数は一定限られており、複数いてもそれぞれ役割を分けるので、同じ仕事をしている人って意外と社内に少ないんですね。ですから、他社の同業者との交流は、思いがけず、共感の嵐で嬉しくなりました。

あと、私自身、これまであまりネットワーキングに力を入れていなかったこともあり、勤めた会社での人脈がベースだったのですが、今回様々な企業のマーケターとお会いして、「同業者と会うって楽しい!」と改めてその価値を知りました。

また、一方で所属する企業の業種業態が様々なので、IT系、流通・小売系、日本を代表するメーカー様などなど。マーケターとしての共通項と、扱う商品・サービスの違いとの両方があり、いろんな方とお話しするたびに新しい視点があるので、刺激的です。

20代で勤めたコンサルティング会社では、様々な業種・規模の企業の方々とお会いする機会がありましたが、当時それぞれのプロジェクトが始まる時のワクワク感と似たのようなものがあり、様々な企業でのマーケティングの注力ポイントをお伺いすることができ、楽しかったです。会社によって新規顧客の獲得やロイヤリティアップ、メーカーさんの自社通販の立ち上げ、アパレルのオムニチャネル化、海外戦略、インバウンド戦略など、様々な課題に向き合われ乗り越えていらっしゃいました。

お一人お一人とお話しすることで、今のマーケットの潮流というか、商機のようなものも見えてきます。メディアや書籍の情報とは違い、リアルにマーケティングの現場で戦う方々の生の声なので、とても勉強になりました。

また、マーケティングという幅広い概念について、自分の経験してきたこと以外の視野、視点にも改めて気づかされました。

これまで私自身のキャリアでは、IT企業でのマーケティング経験がもっとも長いため、CPAをベースとする獲得目的メインのマーケティングが中心でしたら、今回沖縄では単純な獲得のみならず、広く人の心と行動を動かすマーケティングへと視野を広げることができました。

また、前職の同僚がいたり、何年も前に一緒にお仕事した方と偶然に出会ったり、上司の元上司の方とご挨拶したり、とご縁も多く、何だかんだつながりがあるものだなと思いました。

ともかく、そこにマーケターが集まっている、ということに1つの価値があるのです。

会全体の場作り・雰囲気作りが素晴らしい 

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そして、ここまでご紹介した様々な方とのご縁は、もちろん主催者のきめ細かな場作り・雰囲気作りによって生み出されたものです。たとえ3日間あったとしても、普通に過ごしていれば100人をゆうに超える方々とご挨拶しお話しをするのは難しいでしょう。

冒頭から、主催の株式会社ナノベーションさんから「たくさんの方とネットワーキングしてください」と交流を後押しされ、3日間ずっと首から会社名と名前を書いた大きな名札ぶらさげているのもあり、また、積極的かつある意味少々強制的にネットワーキングタイムが設けられているので、多くの方々とご挨拶する機会に恵まれます。

朝・昼・晩すべての食事で別の方と円卓を囲み、またさらには、レクリエーションタイムが設けられているため、業務に関係なく同じ時間を過ごし、共通の話題となる思い出作りができるようになっているのです。

レクリエーションは、ランニング、ビーチアクティビティ、サンゴ植樹、ボディメイク、料理教室など様々で、みなさん沖縄を満喫されたようでした。(私はボディメイクで…スクワットや腕立て伏せなどスパルタコースでした。笑)

そういった取り組みのおかげで、この会に参加した人みんながなんとなく仲間、みたいな空気が醸成されており、一気にマーケター仲間が多数増えたようでした。

3日間、約400名ものイベントを運営するのは、並大抵のことではないだろうと想像いたしますが、スケジュールから場の設定、様々な催しコンテンツと隅から隅まで行き届いた、そして目的を全うした会でございました。

脳を刺激するトップマーケターのKeynote

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また、メインのコンテンツとして、3日間それぞれKeynoteが設定され、一流のマーケターの方々がパネルディスカッション形式でお話をされました。

1日目は、ドミノ・ピザの富永朋信氏をモデレーターに、エステー鹿毛康司氏と元P&Gの音部大輔氏、伊東正明氏の計4名で、エステー消臭力対P&Gのファブリーズで消臭芳香剤の戦いが壇上で再現されます。

ファブリーズが洗濯洗剤関連商品の顔をして、しれっと消臭芳香剤のカテゴリを侵食して行ったプロセスはあっぱれで、なんだか漫画『キングダム』の飛信隊が敵の意表をついて攻め込む姿のようで、さらには敵(であるエステーさん)もそれを密かに察知して動いていたりして、頭のいい将軍と将軍の知能戦のようでワクワクしました。(という感想は少し不謹慎かもしれませんが…)

エステーさんの「消臭力」のマーケティングのハイライトは、2011年、ミゲルくんが高らかと歌い上げるCMが、震災後の人々の心をつかみ大ブレイク。そのCMは便益を伝えているわけではないけれど、顧客の心を動かし距離感が近づき、さらにその強いネーミングと歌の掛け合わせで店頭で「思い出される」ものとなったことがあげられていました。

とはいえ、このマーケティング手法は、どうやってその結論と実行にたどり着いたのかの想像がつかず、何か不思議な魔法のように感じられました。

帰宅後に鹿毛さんの書籍『愛されるアイデアの作り方』を拝読するに、お客様ひとりひとりに、様々な方法で向き合いつつ、真剣にかつ飛び抜けたアイデアを探した結果として、あのようなCMにたどり着かれたのかもしれません。

鹿毛さんの思考プロセスは、今後もさらに深く学んでみたいものです。

…と思っていたら、なんと、同じ登壇者で、改めてアフターカンファレンスがあるようです。いかねば!

「マーケティングアジェンダ2018」アフターカンファレンスを東京で開催 | Agenda note (アジェンダノート)

合わせて、同様に目からウロコだったのが、Keynoteではないですが、2日目と3日目のパートナーのプレゼンで2度登場したライオン・クリニカキッズの動画でした。ママ的に(ターゲットユーザーのため)ぶっ刺さりまして、その背景にある考え方、プロセス、アイデアのきっかけに非常に興味を持ち、後ほどのパーティでライオン・横手弘宣氏にお話を伺いにいきました。

「”こどもの歯みがき嫌い”の理由。実は...」篇 - YouTube

お客様へのインタビューの中から見出した、ある母親の「毎日プロレスなんですよ」という声。これは、子どもへの歯磨きがいかに大変かというのを表現した言葉でした。

その言葉の発見から、ユーザーの体験と心理に寄り添ってインサイトを深掘りし、さらにその苦痛を解決する方法を動画の中で見出しました。マス・数字を見ていると時々わからなくなってしまう、1人のユーザーの生活・体験・心理に改めて寄り添うことの重要性を思い出しました。

いずれにせよ、一流のマーケターの頭の中を覗き見るような感覚で、それは非常に刺激的な体験でした。

(講演の詳細は、私よりずっとわかりやすくまとめている方がいらっしゃるので、そちらにお任せいたします)

 

2日目のKeynoteではマクドナルドの足立光氏をモデレーターに、元セブン&アイホールディングスの鈴木康弘氏よりセブンイレブン流の独特の考え方が披露されました。

広告は打たない、店頭が広告、商品開発者がマーケター、顧客が欲しがる強い商品を持つプレイヤーが勝つ、競合は見ない、基本を徹底、PDCAを回す。本当にお客様が欲しい商品を徹底して追求してきた会社なのだと改めて感じました。

ちなみに、このお話をうかがっていて、同じく巨大流通のアマゾンに酷似してるなぁ思いました。私、アマゾンジャパンに在籍していたことがありますが、やはり同じくコミュニケーションよりも商品そのものを1番のキモとする傾向が強かったですし、また、お客様が喜ぶことを徹底して追求することが何より第一優先で、競合の話を社内でもほとんどしません。

なんというか強い流通には、共通項があるものだと1人納得しておりました。

ちなみに詳細は書きませんが、モデレーター足立さんの軽妙で切れ味のいいツッコミが絶妙すぎてすっかりファンになっちゃいました。笑

 

そして3日目。

カンヌ広告賞グランプリを獲得した、リクルートさんの簡易男性不妊検査キット「Seem」に関する講演。開発責任者・入澤諒氏と広告動画『THE FAMILY WAY』のクリエイティブディレクター・萩原幸也氏の方が登壇されていました。

THE FAMILY WAY / Seem — スマホでできる、精子セルフチェック — - YouTube

新規事業に携わってきた人なら、きっと「1度でいいから世に生み出してみたい」と嫉妬するほど素晴らしい商品力。Seemは、実はあまり知られていない、男性不妊にフォーカスをあてた商品です。晩婚化・晩産化で不妊に悩むカップルは年々増えていますが、実は不妊の半数は男性に起因するもの。なのに不妊治療は女性が進めることが多いため、男性不妊の発見が遅れ女性に負担がかかることが多いそうです。

それを解決するために登場したのがこの「Seem」で、キットを購入すれば、自宅で簡単に検査できるのです。

強い社会的意義と独自性が突き抜けていて、ただシンプルにその本質を伝えることが、最も優れたマーケティング手法だと感じられました。

また、この動画も素晴らしく、実際にSeemで男性不妊が見つかった3組のカップルがドキュメンタリータッチで映し出されます。そのカップルの表情が本当になんとも言えず複雑で、よくぞ顔出しで登場してくれたものだなぁと胸が痛くなりました。リアルに勝るコンテンツはないなと。

私自身、妊娠・出産・育児メディアを担っていたとき、不妊についてもかなり真剣に勉強した時期がありましたが、不妊治療の心理的・肉体的・経済的な負担は想像以上のものです。その負担に寄り添い、そして少しでも解決へのサポートを行う当商品の存在意義は大きいなと、個人的にも応援したい気持ちでいっぱいになりました。

今後、一般の方々向けのPRがさらに充実していくといいなぁ。

 

そして3日目の最後に、改めて3日間を振り返ってのラップアップセッション。

ニトリ・田岡敬氏、吉野家・田中安人氏、ドミノピザ・富永朋信氏、マクドナルド・足立光氏の4名が3日間の学びをまとめました。

このまとめは特にメモの嵐で、学びを全て消化できたわけではないですが、いくつかご紹介します。

「勝ち続けるマーケティングとは?再現性を担保するには?」 との問いには、やはり繰り返す新製品やキャンペーンで、目的と施策、結果を関係者全員で検証し、成功確率を上げていくこと。振り返りなしのやりっぱなしキャンペーンはもったいない、成功も失敗も次に繋げられるようにPDCAを回すこと。そして、成功の喜びを全員で分かち合うこと。チームで成功を導いてこられた足立氏の金言でした。

もうひとつ強く共感したのが、「マーケティングとはゲームのようなもの」というお話。マーケティングとは、会社のお金で社会実験をしているようなもので、いろいろやってみることが面白い。そのためにも、あんなことしたいな、と思ったときにすぐに連絡できるネットワークを持っておくべき。マーケティングとは未来を作る仕事なのだとのことでした。

本当に、マーケティングって面白いんですよね。たぶん辛いこともいっぱいあったと思うのですが、それは忘れちゃって、この仕事の面白さから抜けられないのが、マーケターという仕事なのかもしれません。

そして、Keynoteに登壇された方を中心に、一流のマーケターの思いに触れることで、今の自分の立ち位置や足りないものが見え、さらになりたい姿を見つけることができました。

マーケティングアジェンダは、マーケター同士、また過去と未来をつなぐ場所

さて、ここまで私個人のマーケティングアジェンダ参加体験記を綴らせていただきました。全体をフラットに丁寧にお伝えするというよりは、今回は個人的な視点で感銘を受けた点を書いています。少々というかかなりの偏りがあると思いますので、一意見として参考になさってください。

この3日間、様々な出会いがこれまで過去に自身が関わった事業を想起させたこともあり、改めて、事業というものの面白さ、そしてその中で出会う人のご縁のありがたみを感じ、今の自分の立ち位置を見極めることができました。そしてまた、新たな視点をいただいたことで、これからやりたいこと、チャレンジしたいことも見えてもきました。

他の業務をほぼ一旦止めて投資するこの3日間は、マーケターが自分の過去と未来を見る場所といえるのかもしれません。

また、仕事は面白いし楽しくチャレンジしがいのあるものだなと改めて感じました。そして、チャレンジのプロセスには一緒に汗を流した仲間がいて、そして達成の喜びがある。お客様の喜ぶ姿がある。涙がある。

仕事は人に紐付いているものです。特にマーケティングの仕事は、これからもAIなどで代替できないものが多いでしょう。

マーケティングとは、人と企業を結びつけるもの。もっといえば、企業もまた人の集合体ですから、人と人との対話(コミュニケーション)の中に生まれるものともいえるのかもしれません。

マーケターとして視野を広げ、そんなことを考える時間になりました。

以上、個人的ではありますが、マーケティングアジェンダ体験記でした。

ご挨拶させていただき、一緒に過ごさせていただいた参加者の皆様、心に刺さるお話をくださった登壇者の皆様、会全体を高いレベルで運営してくださった主催者の皆様、本当にありがとうございました。3日間送り出してもらった上司・会社にも感謝です!

人生を彩る家族との思い出に涙が止まらない『リメンバー・ミー』

映画『リメンバー・ミー』を見てきました。街中で主題歌を耳にして、「ああ、これは見に行かないと!」と直感的に思い、夫に息子を預けて1人で行きました。(働くママには、贅沢な1人時間!)
で、結論、とってもよかったです。金曜の夜、いい大人が六本木で、1人でアニメ映画見ながら号泣…。一体何がそんなに私の涙腺を刺激したんでしょうか。

映画の中にある、希望の光 

まだうまく言語化できてないのですが、まず最初に1つだけ確かに言えるのは、私が新卒で映画会社に入ったのは、こういう感動をたくさんの人に届けたいと思ったからだった、と思い出したことでした。
映画は、暗闇で迷っていた学生時代の私の、心の逃げ場所でもありました。その暗い逃げ場所の中に小さな希望を見つけては救われていました。
 
余談ですが、私には、心の内側の世界と、現実的な外側の世界が、同じ量で裏と表のように存在しているような気がしていて、表ばかりに出ずっぱりになると、途端に引きこもりたくなる衝動があります。で、引きこもりたくなると、本や漫画を山ほど買ったり、映画やビデオをボケーっと見たり、何か書き物を始めたり、ネットサーフィンをしたり。
 
そんなあちら側の世界で息をして、その中で見出す希望の光は、こちら側の現実世界で生きるための糧となっていたのです。そうやって「こういう映画を世に届けたい」と映画会社に入社しました。
22歳の幼い思いでしたが、何回転職をしていても、ベーシックな欲求は変わらないんだろうと思います。日々を生き抜いていくための希望の光を提示したいと。

死者が1日生者の世界へ戻って来るために必要なもの 

それでは、『リメンバー・ミー』にあった希望の光とは何か。
それは、タイトルの「リメンバー」にある通り、“記憶がつなぐ愛の絆”です。
 
リメンバー・ミー』はある悲しい出来事から音楽禁止を決めた靴職人の一家の物語です。メキシコに住む主人公ミゲルは、その家族の中で密かに音楽を愛する少年。彼は日本で言うお盆のような日に、ひょんなことから死者の世界に迷い込みます。それは亡くなったご先祖様が、こちらの世界に帰ってくる日でもあります。死者の世界と生者の世界との間に、橋が架かる日なのです。
日の出までに、ミゲルは元の世界に戻れるのか。大好きな音楽を続けることができるのか。絶妙なテンポとストーリー展開で物語は進みます。
 
面白いなと思ったのは、まずその設定です。メキシコのお盆の日に家族はご先祖様の写真を飾るのですが、死者たちは自分の写真が飾られることで、その橋を渡ってこちらの世界に来る権利が得られます。(死者は入国審査のようなところで顔写真を撮られ、それが実際にこちらの世界に飾られているかが照合され、あれば橋を渡ってくることができるのです。)肉体がこの世を去っても、人は、思い出の中に生き続ける。思い出は、この物語の世界では「写真」というかたちで表現されているのです。

記憶の中に生きる愛の思い出

生きるということは、肉体として生きるということと、人の記憶の中に生きるという2つがあるのだということが、『リメンバー・ミー』の世界観に骨格のように組み込まれていました。
そして、人の記憶に残るかどうかは、どれほどの愛を交わしたのかということ。親子の愛、夫婦の愛、音楽への愛。
それが映画のタイトルでもある、主題歌『リメンバー・ミー』の歌が映画の中に1本の川のように何度も流れてきます。

 

リメンバー・ミー
お別れだけど
リメンバー・ミー
忘れないで
たとえ離れても心ひとつ
おまえを思い 歌うこの歌
リメンバー・ミー
遠く聞こえる
リメンバー・ミー 
ギターの音色は
優しく見守り包み込む
また抱きしめるまで
リメンバー・ミー

▼『リメンバー・ミー』劇中主題歌動画

※注:下記の動画はネタバレが含まれるので、映画視聴後にご覧ください

JAPANESE - Remember me (Lullaby) w/S&T【リメンバー・ミー(藤木直人&中村優月)】 - YouTube

JAPANESE - Remember me (Reunion) w/S&T【リメンバー・ミー(石橋陽彩&大方斐紗子)】 - YouTube

▼サントラはこちら

 

主題を彩る鮮やかな世界観と目が離せないストーリー展開

ここまで話してきた主題が涙を誘うのはもちろんですが、一方でそのテーマを彩る世界観とストーリー展開も素晴らしい。

この映画のリー・アンクリッチ監督は、ピクサーの『モンスターズ・インク』や『トイ・ストーリー』シリーズ、『ファインディング・ニモ』などに編集技師〜監督として関わる、ザ・ピクサーマンという感じの経歴の持ち主。これまでのピクサーの流れを汲みつつも、子ども向けには表現が難しい「死者」の世界をうまく描いています。

私、『モンスターズ・インク』の扉がバーっと出てくるオープニング映像とか好きなんですが、本作のオープニングの切り絵でストーリーを見せる感じもとっても素敵。

ご先祖様を迎える死者の日も明るく色鮮やかで、また死者の世界も奥深く広く美しい。ガイコツがこんなにかわいいなんて!さらには死者の世界での歌もまた素敵。

さらには、予想をひっくり返されるストーリー展開も目が離せず、飽きさせずに一気に見せます。

▼楽しい雰囲気が垣間見える、海外の主題歌PV的な映像

(これは視聴前でも楽しめます!)

www.youtube.com

▼主題歌以外で最も盛り上がるデュオ『ウン・ポコ・ロコ』

映画の楽しい雰囲気が伝わってきます!

www.youtube.com

大切なことを改めて教えてくれる

人生で大切なことは、人によっていろいろあります。お金、趣味、仕事…でも最も普遍的で、人生の根本にあるものの1つは、家族との思い出なのかもしれません。

私自身の家族との思い出の1つには、父のシンガポール駐在時代の南国での暮らしが色鮮やかに残っています。咲き乱れる蘭の花、飼っていた熱帯魚、日に焼けた現地の人たちと、桟橋でワタリガニを大量に釣ってチリクラブにしたこと。住んでいたマンションのプールサイドで食べたフライドポテトがうまかったこと。小学校に通ったバス。海外暮らしのときは、比較的家族で過ごす時間が長かったのでしょう。

一方自分の夫と子どもとの思い出。息子が生まれた日、朝の3時から陣痛が始まったこと。夜泣きがひどくて、抱っこ紐に息子を入れて早朝近所を歩き回ったこと。息子が迷子になって交番に駆け込んだこと。夫と飲んだビール。ゴツゴツした岩を降りていった美しいハワイのビーチ。

目を閉じると、まぶたの裏には、家族との思い出のワンシーンワンシーンが、鮮やかに蘇ります。

普段は機会がなければ、思いを寄せることもないでしょう。それでも、人の温かさや自信や生きる力は、そういう家族との思い出に根ざしているものなのです。

あなたの脳裏に浮かぶ思い出のワンシーンは何ですか?お父さん、お母さん、おじいちゃん、おばあちゃんとの思い出は?

家族とは、その連綿と続く系譜の中に、思い出を秘めて息づいているのです。そしてそれは、子へ孫へと繋がっていく。それが大切な生きている意味の1つなのです。親からもらったもの。子へと贈るもの。それは愛です。

 

リメンバー・ミー』はそんな繋がりの奇跡、喜びへの賛歌のような映画でした。

5歳の息子にはちょっと難しいかなと1人で見に行きましたが、子どもと一緒に今度は吹替版を見に行くのもよいなと思っています。

ちょっと疲れちゃったなという時や、もちろんゴールデンウィークの家族のお出かけにも。

リメンバー・ミー』おすすめです!

 

女性はキャリアをどう切り拓いていくか

今日は、最近よく考えることが多かった、女性がどういうふうにキャリアを作っていくのがよいか、について思うことを書いてみようと思います。

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「どっちに進んでいけばいいかわからない」「どうしたら認められるのか」「何かできると思っているのに、正直大したことができなくて焦る」「いつ結婚すればいいのか」「いつ出産すればいいのか」「頑張ってるのにどこにもたどり着けない」「若いオンナだと誰にも重視されない・本気にされない」「チヤホヤされても今だけ」みたいな気持ちの若い女性向けです。なぜなら、私も30歳を過ぎて何年か経つまで多かれ少なかれこのような気持ちを持ったことがあったからです。

女性ならではの制約条件:妊娠出産

女性が働く上で、男性と大きく違うなと思うことは、2つあります。

1つは結婚・妊娠・出産・子育てと、生き方が大きく変わる段階がキャリアを作る時期に重なってくること。子どもを生み育てるということは、自分よりも優先するものができることでもあるから仕事だけに集中するというわけにもいかないし、さらに、その時期自体は明確に決まっているわけではない。それなのに、妊娠出産ができるタイムリミットだけはある。いつか子どもを産みたいと思ったときに、「一体いつがよいのか」というのは、本当に多くの人が悩む問題ですし、いつ産んだとしても、「そうでなかった別の道」を想像して、うっすらと後悔をしたりするのかもしれません。

「若い女子枠」チヤホヤ問題

もう1つは、若い女性はそれだけでチヤホヤされるということです。また、悪気はないけれど、女性に仕事を任せきれない男性マネージャーというのも結構います。これはいずれにしても、キャリアに大きく影響してきます。

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このチヤホヤ問題は、結構深刻です。若い女性というだけでクライアントのオジサンに好まれやすい傾向があるので、そのために「若い女子枠」でアサインされる仕事があったり、ニコニコ笑ってるだけで話を聞いてくれる人もいたり、なんというかよくも悪くも機会は多いのです。いい意味でのチャンスももちろんあります。

ただ、残念ですがこの「若い女子枠」は期間限定で必ず終わりがきます。ですから、「若い女子枠」に甘んじて、ニコニコお酌だけしてたらダメです。(お酌をキャリアにしたかったらもちろんそれでもいいです)たまに見かけて辛い気持ちになるのが、「若い女子枠」のまま、本気で目の前の仕事に取り組むことなく、妙齢を迎えてしまった女性。ある意味、ちゃんと仕事をしなくても許されてしまったりするんです、この「若い女子枠」。あと気づかないうちに周りに手加減されてしまってたりもします。でももちろん、仕事をしないと仕事の力は身につきません。女性部下に遠慮し気を遣って厳しく言えない男性上司も意外といます。でもこれ、本当にチャンスロスなのです。特に美人さんは要注意ですよ!

だから、逆に、遠慮せずに仕事をガンガン振ってくれる上司の下についた女性は、ラッキーです。きっとその方は、大きな器で人を育てられる人なのでしょう。その人に鍛えられて強くなりましょう。

キャリアは計画通りにはいかない

そんな制約条件に縛られる女性たちは、いつどこに向かって何を頑張れば、自分の幸せを得られるのか、男性よりも割と早い段階で考えます。就活、婚活、妊活、保活。どれもなかなか大変です。もちろん仕事もしたいです。

でも、配属も異動も昇進も、転職も、結婚も妊娠も、自分の思い通りにいくことってあまりありません。もちろん一定の希望は持つのですが、全然予定通りに行かない!30歳までには結婚しようと思ってたのに、早く子どもが欲しいのに。

先日ニュースで、保育園の園長が、保育士の妊娠の順番を決める、なんて馬鹿げた話がありましたが、命はそんなに計画的なものではありません。文字通り授かるものですから。

年齢が上がるほどに妊娠が難しくなるのは事実ですし、高齢出産ほど障害を持って生まれる確率は上がるし、また親として体力的にもきつくなっていきます。確かに出産は早いにこしたことはありませんが、でも、とはいえ私は「赤ちゃんがやってきたときが生み時」だと思います。(もちろん家庭や経済的な事情で、実際にはやってきても産めないときもあるとは思いますが)

赤ちゃんは授かりものです。準備ができたときにやってくるのでしょう。(それは自分が考える「準備が整ったとき」ではなく、神様の目から見て、「そろそろ赤ちゃんと出会うとき」なのかもしれません)

また赤ちゃんに限らず、「自分の元にやってきた仕事は、チャンス」とも。自分に訪れる出来事は、大切な機会です。ですから、チャンスを思い切り生きればよいのです。

計画はしてもこだわり過ぎないこと。機会を柔軟に活かして、計画を変更していくしなやかさが大切です。

今必死で取り組んでいることは、次の仕事の糧になる

ちなみに、私も、自分のキャリアの方向性はこっちだな、こういうことはできるな、と思えるようになるまでに、結構時間がかかった方だと思います。若いIT企業なら早ければ20代でマネージャーに昇進し、バリバリ仕事をする人も多いと思いますが、私自身の20代は、必死で寝ずに働いているのにパッとせず、異業種転職でそのたびにゼロスタート、そして、やっとこっちの方だなと思ったころに妊娠し、産休・育休を経て戻ってみたら、環境がすっかり変わっていて…と、なんだか全然思うとおりに行かない20代〜でした。

自分にはきっと何かできるはず、と思うのに、何者でもない自分に、本当に焦りました。なまじ、学生時代は田舎の期待の星(苦笑)みたいな真面目な優等生だったこともあり、プライドも高く、どうにか人に評価されたいと思うのに、一体どちらに向かっているのかもわからないし、ちっとも自信も持てないし、なんだか辛かったです。

でも、振り返ってみると、その時は失敗や遠回りだと思ったことも、みんな糧になっていたのだということです。迷走していた時期に、師匠となる先輩・上司に何人も出会ったし、この方のためにお役に立ちたいと思うクライアントにも出会ったし、新しい発見、学び、そして、成果を出す喜び、みたいなものがありました。

また、新卒での編集経験と自身の子育てが、後の子育てWEBメディアと、ヘルスケアWEBメディアの編集という仕事につながりました。当時珍しかったIT企業で働くママとしての奮闘が、女性活躍推進の波に乗って経験をシェアする機会にも恵まれました。

船井総研で学んだマーケティングの基本が、その後様々な事業に携わる上での考え方の基礎になりました。DeNAでの仕事の進め方やチームワークが、みんなで仕事をするコツや楽しみ方のベースになりました。

目の前の仕事を、納得のいくかたちにする

振れ幅の大きいキャリアだったからこそ、多くの視点を身につけられました。今振り返ると、穴があったら入りたいぐらい恥ずかしい失敗もありますが、でもこんな私に機会をくれた方がいらっしゃって、その方々のおかげで、1つ1つの仕事に取り組み、できることがコツコツと増えていきました。

だから、大切なことは今目の前にある仕事をないがしろにしないこと。誰が見ていてもいなくても、自分の中で納得のいく仕事の仕方をすること。自分の頭で考えること。

それから明確なオーダーをくれる、仕事をくれる人に、応えること。オーダーの本質を見つめ、それを達成すること。

そうすることで自分なりの技術や経験、考えが育っていくのだと思います。そして、結果的に道が開けていきます。

肝心なことは、きちんと自分の頭で考えることです。受け身になってはいけません。鵜呑みにしてもいけません。「どうすればよいか?」を常に考え、もちろん人に相談したり、先輩の姿を参考にしたり、ライバルの振る舞いを参考にしたり、同僚と協力したりしながら、自分で道を切り開いていく。

唯一絶対の解はありません。

そして、誰にでも必ずチャンスはきます。だから、チャンスが訪れたとき、「これだ!」と思ったらしっかりつかむことです。遠慮をしてはいけません。自分の人生をよくするのは自分しかいません。

自分の毎日の選択が、大きな人生の流れを作っている

「一体自分が何をすればいいかわからない」「何をやりたいかわからない」という悩みを持つ人は、結構多い気がします。私も異業種転職を繰り返し、その選択を失敗だとは思わないけれど、説明がつかないと思っていました。

でも、振り返ってみると、バラバラに見える人生で起こる1つ1つの出来事は、1つの大きな流れに乗っています。深海の海流のように、よく見えなくても深くゆっくりとした流れがあるのです。その流れを形成するのは、自分の選択です。自分のものの見方や大切にしていること、それが1本の道を作っているのです。

そして、成功しているように見える人も含め、生きている誰もが、その道の半ばにいるのではないかと思います。

10代の時は、20歳を越えれば安定した大人になれると思っていました。20代の頃は30代には落ち着いた大人になっているのだろうと思っていました。30代の半ばを過ぎてもなおやっぱりまだまだ何も完成していません。これから何があるのかどちらに向かっているのか、わかりません。確信を持って目標へ向かっている人はごく一握りで、今から何があるか、何をするのかは、誰にもわからないんです。

でも、少しずつ人生の目的へと向かっているのだと思います。毎日決めて、進めばいいのです。

仕事、楽しんでいますか

行き先の見えない毎日を、不安に思う必要はありません。よく見えないのが未来というものの性質です。大切なことは今の自分の気持ちです。

楽しんでますか。充実感を持てますか。

共に働く仲間がいますか。尊敬できる人がいますか。

小さくても毎日何か誰かの喜びにつながることができていますか。

仕事というのは、それ自体がもっとも大きな報酬だと私は思います。

人からの評価も大切です。もちろんお給料も大切です。でも、もっとも大切なことは仕事を楽しみ、仕事を創っていく喜びを得ることです。そしてそれが誰かに喜ばれる醍醐味を味わうことです。もちろん最初から大きな仕事を任せてもらえるわけではないですが、小さな仕事でも喜びを築いていくことはできるはずです。

私、それ、できるかも!役に立てる!と思う仕事には積極的に手をあげましょう。そして覚悟を持って全力で結果を追求しましょう。

それがきっと、道を切り開いていくはずです。

死ぬぐらいなら逃げよう

最後に、電通の亡くなった女性のことも気になるので1つだけ。

耐えられないぐらい辛いなら、死にたいぐらい辛いなら、そこから逃げた方がいいです。仕事は命を犠牲にしてまでやるものではありません。

大切なのはまず生活、健康、その上に他者への貢献、すなわち仕事があります。

それと、辛さの尺度を他人と比較するのもやめた方がいいです。「あの人はあそこまでやってるのに、このぐらいで音をあげるなんて」といった比較は無意味です。

人が辛さや楽しさを感じる感性は、人それぞれなのですから。あなたが自分の心と体を見つめて、「ああもうやばい、無理だ」と思うなら、正々堂々とその環境から逃げ出しましょう。

失敗や挫折は人を臆病にします。だから真面目な人ほど「失敗できない」と思ってしまいます。でも、逃げるが勝ちという戦略だってあるのです。

勝てない戦で撤退するのは、立派な戦略なのです。

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